コンサートで、あらかじめプログラムに記載されていた曲も良かったけれど、
アンコールも心に残った・・・。そんな経験は誰しもあると思います。
つい先日の、アフリカ系米国人のソプラノ歌手、インドラ・トーマスの公演もそうでした。
河原忠之のピアノに乗せ、ヴェルディの「アイーダ」から“勝ちて帰れ”の他、
ニグロスピリチュアル「5つの黒人霊歌」(ホール・ジョンソン編曲)を聴かせ、
その迫力に圧倒されました。
すべての演目が終わって拍手。河原と一緒に何回か、舞台の袖と中央を往復したトーマス。
さて、いよいよアンコールかという段になって、1人で舞台に登場しました。
「あれ、ピアニストは?」と客席は一様に思ったのでしょう、
かすかなざわめきが起こりました。
それが納まるのを待っていたのか、しばらくしてからトーマスは、
ソプラノにしては低いトーンで無伴奏で歌い始めました。
歌詞の一節が出たその瞬間、またも客席にざわめきが起こりました。
有名な「アメイジンググレース」が始まったからです。
親しみやすいメロディーの中にも、演歌のこぶしにも似た歌い回しを入れ、
豊かな表現力で歌いきりました。
万雷の拍手は言うまでもなく、感涙を拭っている婦人も何人かいたほどでした。
アメイジング・グレースの詞は、奴隷船の船長が引退後、牧師となり、
懺悔の意を込めて書かれたとか。
アフリカ系米国人にして牧師の娘であるトーマスは、
自身のルーツを表現したくてこの曲をアンコールに選んだのでしょうか?
あるいはこの曲が、急逝した本田美奈子のバージョンなどで
日本で人気があるのを知っていて、アメリカ人特有のサービス精神で歌ったのでしょうか?
いずれにしても、あらかじめ告知されていた曲以上に、深く心に残った歌唱でした。
なお、トーマスのインタビュー記事が弊誌7月号(5月20日発売)に掲載されています。
ご関心のある方は、こちらもぜひ、お読み下さい。 (山)


by toshima59
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